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臨床工学技士blog

臨床工学技士である管理者が、知識の整理も兼ねてですが、主に臨床工学に関する情報をアップしていきたいと思っています。

初期設定


ペースメーカの初期設定って普段何気な~く設定していますが、最終設定を決めていく上でpointとなるであろう重要な設定項目に関しては、“なぜその値にするのか??”を考える事は大切な事かなと私自身は思っています。

今更な感じもしますが、適当に羅列していきたいと思います


PVAB(Post Ventricular Atrial Blanking)
これはFFRW(Far-Field R Wave )の評価を行い、“FFRWが認められない”という前提であれば最短(例えば60msec)に設定します。FFRWが認められた場合であってもP-waveの波高が十分で心房感度設定でFFRWをかわせる場合も最短(例えば60msec)に設定します。これには“AT/Afの適正判断”といった狙いがあります。PVABを不必要に長く設定してしまうと、仮にAT/Afが起きた時にPVAB内にP波ないしf波が隠れてしまうので“適切にMode Switchが作動してくてない”それに伴い“AT/Afの%の信憑性が欠けてしまう”為です。

FFRWの確認方法ですが、例を挙げると...
心房感度をMaxの0.1mVにPVABをMinの60msecに設定しfull-VPの状態にします。VSの状態でもFFRWは確認可能ですが、VP時のFFRWの方が“より大きく、出現が遅い”為、この“最も厳しい条件下”でFFRWの評価を行います。FFRW(dullな電位)が認められた場合は、どちらか一方を最も厳しい条件(心房感度であれば0.1mV、PVABであれば60msec)で固定しつつ、もう一方のParameterを1段階ずつあまくしていきFFRWが消えるPointを各々で探します。

そうですね...例えば、FFRWが認められ、各々心房感度=0.2mV(PVAB=60msec)、PVAB=110msec(心房感度=0.1mV)でFFRWが消えた場合FFRWをどうかわすか??

自己のP-waveの波高が十分あれば心房感度を鈍く(例えば0.5mV)に設定してFFRWをかわします。FFRWが認められない場合はf波をより確実に感知させる為に0.3mV程度に設定します。deviceの取説を読むとPVABはFFRWをかわす為に設けられているParameterとありますが、実際の臨床では心房感度設定を調整してFFRWをかわします。PVABを延長させたくない理由は上記に記した通りです。



・Ventricular Blankingは最短の12msecに設定します。このparameterはAtrial Pacing直後に作動し、本来であればcross talk防止の為に設けられていますが、そもそも最近のdeviceであれば例え最短の12msecであったとしてもcross talkを生じる危険性は限りなく0に近いという事。

それよりも、不必要にVentricular Blankingを長く設定してしまうと、AP直後にPVCが発生した場合、Ventricular Blanking内にPVCが隠されてしまうのでAPから設定AV-Delay経過後にVPを出力してしまい“VP on T-waveからVfに移行してしまう”危険性が危惧されます。それを防止する為にも最短の12msecnに設定しています。


不応期関連のparameterは不必要に長く設定するのは好ましくないという事です。


・AMS Detection Rateは基本的に170bpm程度に設定します。このparameterに関しては実際に起きているAT/AfのRateがどの程度なのかが問題となってきますが、初期設定に関しては経験上170bpm程度に設定しているというのが正直なところです。あくまで初期設定という事で。

と言うのも180bpmまで上げてしまうとrealなAT/Afが検出出来ない可能性が有ります。では150~160bpmでは駄目か??という事ですが、150bpmに設定してしまうと、ご高齢の方であってもSinus Tachyがその位のRateまで上がる場合が有るのでこれではやはりAMS Detection Rateとしては低すぎます。

という事で経験上170bpm程度が適切だろうという事になります。

Rateに関してはMax Tracking Rate及び2:1 Block Rate、AT/Af Detection Rateの3つのバランスを考慮する必要性が有りますね。

Max Tracking Rateに関しては2:1 Block Rateとの差が10bpm未満の場合は、患者自身のQOLを確保する(2:1 Block Rateを上げる)為にもRate Response AV-Delay等のparameterをONにする事も有効でしょう。

また、AV-Delay及びPVARPの兼ね合いで2:1 Block Rateが低くなってしまう事が考えられますが、Max Tracking Rateと2:1 Block Rateが近接(10bpm未満)していると、あるRateに達するとRateが急に半分になってしまう可能性があるので注意が必要です。Max Tracking Rateが130bpmで2:1 Block Rateが141bpmの場合、Rtae=130bpmまでは1:1でといてきますが徐々にWBとなり140bpm以上になると急にRateが半分になってしまう...という事です。10bpm以内は好ましくないと言えます。


続けていきたいところですが、長くなってきたのでとりあえずこの辺で
  1. 2012/07/01(日) 18:02:19|
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PMT


PMT(Pecemaker Mediate Tachycardia)の原因として以下が挙げられます


①心室性期外収縮(premature ventricular contraction)
②PVARP(Post Ventricular Atrial Refractory Period)内及びPVARP外の心房性期外収縮(premature atrial contraction )
③Atrial Pacing failure
④Atrial Sencing failureも考えられるでしょうか


上記に記した中で比較的多いものは“PVC”と“Atrial Pacing failure”です

Atrial Pacing failure(心房興奮なし)⇒設定AV-delay経過後にVP(Ventricular Pacing)⇒心房興奮が認められていない為、心房は不応期ではない⇒VPからの逆行性伝導で心房興奮が生じる(心房興奮が起きていないので逆行性伝導が心房に上がりやすい為)⇒設定AV-delay経過後にVP(MTR=Maximum Tracking Rateによる制限はうける)⇒逆行性に心房興奮⇒PMTといった具合でしょうか

PMTが起きる条件の1つにVA伝導(+)が有るのですが、VA逆行性伝導で心房興奮が認められるか否かは“心房が不応期を脱しているか否か”がPointとなります。
要は心房興奮後のAV-Delayを比較的長く設定している様な場合、心房は不応期を脱してしまい、VA逆行性伝導が有る場合は逆行性に心房興奮が認められる可能性が高いという事です。

VA伝導(+)の場合は不必要に長いAV-Delayを設定していると、それに引き続くVPによってもたらされた逆行性伝導が心房の不応期を脱してしまい心房興奮が起きてしまう可能性が高くなります。

PACもVP後のPVARP内のPACで心房興奮⇒それに続くPVARP外APは心房興奮を生じない(PACによって興奮した心房が不応期を脱していない為)⇒APから設定AD-Delay経過後のVPが入りVA逆行性伝導が伝わる頃には心房は不応期を脱しているのでVA逆行性伝導によって心房興奮が生じる⇒まわってPMT

VP後のPVARP外PACで心房興奮⇒設定MTRに見合った延長したAD-delay経過後にVP⇒PACによって興奮した心房が不応期を脱している(MTRによる制限でAV-DelayがWenckebach様に長くなる為)のでVA逆行性伝導が心房興奮を起こす⇒まわってPMTといった具合でしょうか

曖昧な解説で申し訳ないのですが...本題はここからです

実はもう一つPMTを起こす原因があります


VA逆行性伝導が認められ、且つSJM社の“心室自己心拍優先機能(Ventricular Intrinsic Preference)で比較的長いVIP Extentionを設定”している場合です


VIP Extentionとは、自己伝導をSearchする為に、device本体が“Senced AV Delay interval”を延長する時間を定めるParamaterです。maxで200msecの設定が可能です。

以下に実際にVIPを契機にPMTが起きた症例を提示します



まず上段の“VIP-maker”でVIPが作動し、Senced AV-Delay intervalが145msec⇒293msecに延長しています(VIP Extention=150msec)がR波のセンシングがめられなかった為、VPが入っています。

この方は、もともとVA逆行性伝導があるの事は確認済みなのですが、VIPによって延長したSenced AV-Delay intervalにより、ASによって興奮した心房が不応期を脱してしまい逆行性に心房興奮を起こしています。それがまわってPMTが起きています。

deviceのPMTの検出ですが、PMT detection Rateの設定値より早く、ほぼ同じ長さのVP-AS-intervalを8回連続して検出するとdeviceは“PMTが起きているかも??”と疑いにかかって以下の動作を行います。要は速くて安定したVP-AS-intervalを検出するとPMTを疑ってきます。

今回はAS-VP interval<100msecだったのでSenced AV-Delay intervalを50msecだけ延長します。
下段の“PMT Trigger”手前の一拍だけASからVPが入るまでのSenced AV-Delay intervalを215msec⇒266msecに50msecだけ延長させています。

PMTの場合は“Senced AV-Delay intervalを変えてもVP-AS intervalは不変”なのでPMTだと判断して停止にかかります。
具体的に言いますと、延長させたSenced AV-Delay interval直後のVP-AS intervalが前の8回のVP-AS intervalとの差が16msec以内であった為、deviceはPMTが存在していると判断してPMT Responseを開始します。

deviceはVPを一時停止し、検出された逆行性P-waveの330msec後にAPを出力してから通常の動作を行っています。要はPVARPを一拍のばして逆行性伝導のASに同期させてVPをうつのをやめます。
それに引き続くAPによって心房興奮を起こしてVPによる逆伝が心房の不応期内へと収まりPMTが停止するといったものです。

VA逆行性伝導が認められる患者に対してVIPを設定する場合、自己R-waveの出現を期待して不用意にVIP Extentionを長く設定してしまうとPMTを起こす可能性があるので要注意です。
  1. 2012/07/01(日) 16:25:30|
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IVUS教育


PCI(経皮的冠動脈インタ-ベンション)におけるIVUS(血管内超音波)は、治療を行うにあたって非常に重要な情報源となります

当院では年間600~800件前後のPCIを実施していますが、ほぼ全症例にIVUSを使用しています

そして、IVUSの操作、計測、データ管理を担っているのが我々臨床工学技士です

適切な位置にSTENTを留置する為にも、IVUSではside branch(側枝)の同定が非常に重要となります

ことろが、冠動脈の形態は千差万別でありIVUS画像から本管と側枝及び病変部位との位置関係を把握する事は決して簡単ではないと思います

そこで当院で行っているIVUS教育といいますか、治療を進めるにあたってIVUSから得られた有用な情報をレスポンス良く医師に提供出来る様にする為に実施している方法を紹介します

その方法とは“術前のシネ画像を見ながら標的となる冠動脈の絵を書く事”です

“本管と側枝及び病変部位との把握”が出来ればいいので丁寧に書いてリアル感を出す必要はありません(側枝との位置関係は正確に書く必要はありますが...)

PCI実施の決定からSTENT留置前のinitial IVUSまでの間に1~2分程度で書いてしまいます

そしてメルクマークとなるであろうside branchを確認し、bookmarkをどこにたてるかを頭の中で予めsimulationしておく必要があります

当院ではオートプルバック(0.5mm/sec)で記録しているのですが、Pull-back記録開始から“どれ位の時間(距離)”に“どの方向(時計方向)”から“どのbranchが合流してくるか”を、IVUS記録中リアルタイムにすべて絵に書き込みます

IVUS装置に搭載されているbookmark機能は非常に有用なtoolなのですが、自分がたてたbookmarkがどのbranchなのか把握できなければそのbookmarkは意味も持ちません

恐らく施設によってはマニュアルプルバックで記録している場合もあるかと思いますが、マニュアルプルバックでは操作している医師しか分かってないのでは?と個人的に思ってます

IVUS操作に臨床工学技士が関わっている施設は多いと思いますが、記録後に医師から血管径を測る様に指示されたものの「もう少し手前戻って~いきすぎいきすぎ、戻って戻って、そこそこ、そこの血管径測って」といった感じ指示を仰いで臨床工学技士はIVUSを操作している施設もあるかと思います

ですが、その様な事であれば日本語が理解でれば誰にでも出来ると思いますし、臨床工学技士ではなく完全に機械屋さんと化してしまいうので良くないと思います

我々は臨床工学技士ですので“IVUSからいかに有用な情報を医師に提供する事が出来るか”が重要だと言えます

話がそれましたが、STENT留置前のinitial IVUSでは上記の様な流れで実施しています

ポイントは“シネ画像を診て標的となる冠動脈の絵を書く事”そして“bookmarkをどこにたてるか(branchの合流部位)をsimulationし、たてたbookmarkがどのbranchなのか把握する事です

STENT留置後のIVUSはinitial IVUSと違い見るpointが限られてきますのでそれ程難しくはありません

STENT留置後のIVUSの確認事項は以下の3点です

①STENT Edgeの解離(主にHematoma)の有無
②STENTの密着具合は十分か
③STENTの拡がり具合は十分か

STENT留置後のIVUSではSTENT Edgeにbookmarkをたてています

この時もPull-back開始からの距離(時間)がリアルタイムに画面に表示されていますので、その数値及び留置されたSTENT長を把握していれば、もうそろそろSTENT Edgeかな~と推測する事が可能となります

例えばLADに50mmの病変があってそこにSTENTを留置する場合...

23mmと28mmのSTENTを留置して1mm stent over rapさせたい場合、どちらをdistalにするかあるいはproximalにするのか...

IVUSで計測して23mmをdistalに留置した場合、stent over rapがside branchの分岐部と一致する様であれば“28mmをdistalに留置してproxmalに23mmを留置して下さい”医師に有用な情報を提供する事が出来ます

initial IVUSで石灰化が無いにも関わらずacoustic shadowが認められる場合は医師にdistal ptotect(末梢保護)をした方がいいですよ~といった情報を提供できます

本管側にプラークが存在する場合や側枝の径が大きい場合、側枝の根元にプラークが存在しない場合は側枝が閉塞する可能性は少ないですよ~といった情報を提供できます

如何せん、IVUSでは“initial IVUSでいかに有用な情報を提供する事ができるか”これが重要と言えます
  1. 2012/04/22(日) 22:12:27|
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KCJL2012


今日はコメディカル招待状を頂いたのでKCJL2012に参加してきました

午前中はCo-medical Sessionを聴講したのですが、マニアックな内容だったのでとても勉強になりました

基礎的な内容も重要だと思いますが、毎回基礎的なSessionばかり聴講していても進歩はないので“自分のレベルに合わせて聴講するSessionを選択する事”は必要かなと個人的に思ってます

また、参加型のHands-on Sessionがいくつかありますが、擬似血管モデルやVirtual Simulatorを用いてGuide Wire挿入からstent留置までのPCIの一連の手技を体験できるPCI Hands-on Sessionは面白いですし非常に勉強になると思います

あと、毎回人気はあるそうですが“冠動脈模型作成”はあまりお勧めしません(あくまで私の個人的な意見ですので...)

インストラクターは放射線技師の皆さんです
個人的な意見ですが、模型を作成する時間があればもっと応用的な内容のSessionに参加した方が為になると思います

話は変わりますが、今日は第4回ペースメーカ関連検定試験の合格発表でした

http://www.ja-ces.or.jp/academy/index.html

合格率は22%とやや狭き門でしたが、無事に合格する事が出来ました

そこそこ自信はあったので一安心です

但し単位取得の兼ね合いで、ペースメーカ関連専門臨床工学技士認定の為の指定講習会受講は来年度になりそうです

明日もKCJL2012に参加しますので何か一つでも新しい知識を得たいと思います
  1. 2012/04/20(金) 22:22:11|
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第12回PMF研究会、KCJL2012



今日から4月ですね

新人歓迎会や送別会等いろいろ重なる時期ではありますが、体調だけはしっかり管理していきたいと思います

さて、今月はKCJL2012第12回PMF研究会が開催されます

KCJLは最終日のみ参加になりますが、何か1つでも新しい知識を得て臨床に活かせればと思っています
  1. 2012/04/01(日) 09:08:31|
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