
心房細動に対する
Catheter Ablationは近年急速にその実施施設が増加してきています
当院でも数年前から積極的に心房細動に対するCatheter Ablationを実施しています
当院は約160~180件/年のCatheter Ablationを実施していますが、その半数を心房細動が占めており、ここ最近は慢性・持続性心房細動の占める割合が増加してきています
心房細動Ablationは長期戦です、初回治療(1st Session)が約3時間(他施設に比べると当院はかなり早いです)かかります
1st Sessionで発作性の場合は1時間30分で終えた事もありますし、逆に慢性や持続性の場合は3時間以上かかる事もありCase by Caseです
最も再発で2nd Sessionとかだと早ければ1時間以内(40分で終わる事も...)で終わってしまいます
日によっては心房細動Ablationが4件...という事もあります
もちろんすべて新規ではなく再発の場合も多いのですが...
心房細動Ablationは、他の不整脈のAblationと比較すると、マニアックな世界でどうしても知識よりも手技が先行している印象があります
ここで当院の発作性及び慢性/持続性心房細動に対するAblation Strategyを簡単に紹介したいと思います
写真は手元にいいのがなかったので、ちょっと分かりにくいですが上図が左心房のAP-Viewで下図が右心房のLAO-Viewになります(本当は肺静脈周囲線状焼灼が完成した図を載せたかったのですが)
【発作性心房細動(Paf)に対するAblation Strategy】
1.CSへ1本、左房へ2本のシースを導入
2.
CARTO mergeで左房のCTをベースに使用
3.洞調律もしくは心房細動中にLASSO非ガイド化下に1本のイリゲーションカテーテルのみで肺静脈周囲解剖学的円周状焼灼
4.LASSOカテーテルを挿入して、左房・肺静脈間電気的完全ブロックを作成
*心房細動誘発や、Line状焼灼は実施せず、2nd Session以降では考慮する
*1st Sessionの治療時間は2時間30分を越さない程度で終えている
【慢性・持続性心房細動(Caf)に対するAblation Strategy】
1.左房へ挿入前に上大静脈の高頻度興奮の有無評価(CS-RAカテーテル)
2.心房細動中の肺静脈周囲解剖学的円周状焼灼
3.左房roof-line線状焼灼
4.LASSOカテーテルを挿入して心房細動中の肺静脈電気的隔離(深追いせず)
5.CFAE(complex fractionated atrial electrogram)焼灼
6.DC
7.肺静脈隔離の確認
*5まで実施して心房細動が停止するのは約10%でDCで停止させる事がほとんど
*再誘発、Mitral IsthmusやCS-lineの焼灼は実施せず、2nd Session以降では考慮する
*1st Sessionの治療時間は約3時間程度で終えている
当院の
CARTO-mergeの方法ですが
1.左心房-肺静脈移行部(当院ではLIPV1カ所)のmap pointを作成
2.左房後壁のおよそ30カ所のmap pointを作成
3.LIVP 1pointを用いてvisual alignmentを実施
4.さらに、全map pointを用いたsurface registrationを実施
5.registration後のmap pointとCTで作成したLA imageとの誤差を比較し、誤差が大きいmap pointは削除し再度surface registrationを実施⇒肺静脈周囲解剖学的円周状焼灼へ...
ちなみに当院の成績ですが、慢性・持続性心房細動の場合であっても約80%は洞調律が維持できいます
発作性心房細動に移行した症例も含めると約90%の症例は慢性・持続性の心房細動ではない状態にまでもっていけています
もちろん再発して2nd Session...という症例も決して少なくないのですが
再治療時の所見で多いのはやはり“
肺静脈伝導再開”で、再度隔離のみ実施して終了しています
慢性・持続性心房細動のAblationでは
肺静脈がしっかり左心房から隔離されているという事が非常に重要なのです
- 2011/12/30(金) 15:49:45|
- EPS、RFCA
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
心臓を正面から見た図
右心房(RA)には上大静脈(SVC)と下大静脈(IVC)か開口しています
黄土色っぽい部分がSVC-RA-IVCにあたります
正面の水色は右心室(RV)+肺動脈(PA)になります
左心室(LV)は正面からは見えません
つまり...心臓を正面(AP-view)から見た場合、
右心室が左心室の手前にあるという事です
これは例えば、右脚ブロック(RBBB)の心電図で胸部誘導であるV1,V2誘導はどんな波形になるか理解する上で役に立ちます
その前に、
心電図を理解する上での大原則
電極に向かって興奮が進むとき、波形は上向きになります
電極に向かって興奮が遠ざかるとき、波形は下向きになります
右脚ブロックの時は、最初に左脚から左心室が興奮して、そのあとで右心室が興奮します
つまり
左心室⇒右心室の向きに興奮が進みます
言い換えると心臓の
後(左心室)⇒前(右心室)に興奮が進みます
後から前に興奮が進む...っていうことは心臓の前に貼ってある誘導であるV1,V2に向かって進む訳ですよね
だから右脚ブロックではV1,V2で波形は上を向くのです
右脚ブロックだからV1,V2は上を向くではなく、もう一歩踏み込んで
右脚ブロックでは興奮は左心室(後)から右心室(前)に向かって進むのでV1,V2は上を向くんだと
こうやって覚えておくと後々忘れないんですよね
右脚ブロックの時の心電図の特徴を丸暗記するより効率的かなと思っています
応用も効きますしね
私は暗記するのは大嫌いで、
なんでそうなるのか?なぜ?どうして?を常日頃から意識しています
では左脚ブロックの時のV1,V2誘導は上向き?下向き?
簡単ですよね
左脚ブロック⇒左脚がブロックされているので左心室に興奮が伝わらない⇒右脚は正常なのでまず右心室が興奮⇒右心室の刺激が順ぐり順ぐり左心室に向かって進み左心室が興奮する
興奮の進む向きは右心室⇒左心室
言い換えると心臓の前⇒後
心臓の前に貼ってあるV1,V2から見ると前⇒後...なので興奮は遠ざかっていく
遠ざかっていくので波形は下向きに振れる
他にも
PCVの起源や
WPWのAccessary Pathwayの部位を推定する上でも役に立ちますね
赤色は大動脈(Aorta)
桃色?は左心房(LA)-肺静脈(PV)となります
心臓を真後から見た図
色はAP-Viewと同じく
・黄土色⇒SVC-RA-IVC
・水色⇒RV-PA(PAが左右に分岐する部分が見えています、RVは正面にあるのでPA-viewでは見にくい)
・桃色⇒LA-PV(PVは肺静脈で上下左右に計4本ありますね)
・赤色⇒LV-Aorta
・紫色⇒食道
図を見て頂ければ一目瞭然ですが左心房(LA)は
心臓の真後にベッタリくっついております
左心房って心臓の左側にあるものだと思い込んでいる方も多いかもしれませんが、
心臓の真後にあるんですね
そして左心室が右心室の後にある事も一目瞭然ですよね
- 2011/11/21(月) 19:11:22|
- EPS、RFCA
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0