~産経ニュースより~
2011.10.18 21:03
人工心肺装置を示しながら説明する京都大病院の伊達洋至呼吸器外科長=18日午後、京都市左京区
京都大病院(京都市左京区)は18日、今月10日に脳死肺移植手術を受けた40代の女性患者が、手術後に脳障害を発症したと発表した。女性は意識不明の重体。手術中に使った補助的な人工心肺装置に気泡が混ざり、約4分間止まったことが原因の可能性がある。京大病院は家族に謝罪するとともに、京都府警に事実関係を報告した。
京大病院は、近く外部の専門家を含む調査委員会を設けて原因究明に乗り出すとしている。平成18年の医療事故では脳死肺移植を約3年間自粛したが、今回は「明らかなミスがあったとは認識していない」として移植を継続する方針。
京大病院によると、女性患者は10日、山梨県立中央病院で脳死と判定された60代男性から両肺の移植手術を受けた。手術は午前10時38分に始まり、午後8時54分に終了したが、その約14時間後のCT検査で、脳に広範囲の腫れなどが見つかった。
手術中の午後5時59分に移植した肺の機能が低下したため、女性患者に補助的な人工心肺装置を取り付けたところ静脈血を抜き取る管に気泡が混入。安全機能がはたらいて約4分間、人工心肺が停止していたという。
この約4分間は脳に十分な血液が行き届かなかったとみられ、血圧や血中の酸素濃度が低下。ただ、気泡を取り除いた後は人工心肺が正常に動き、移植した肺の機能も回復したため、京大病院は手術終了直後に「順調に経過している」と公表していた。
京大病院は18日午後に記者会見。執刀した伊達洋至教授(呼吸器外科)は、気泡が混入した原因について「機械が故障したとは考えにくく、ふたの閉め忘れなどもなかった。どこから空気が入ったか分からない」と述べ、一山智副院長は「調査委員会の結論を待ちたい」とした。
京大病院では18年3月、脳死肺移植手術を受けた30代の女性が脳障害を起こし、同年10月に死亡する事故が発生。当時の執刀医ら3人が業務上過失致死容疑で書類送検され、のちに不起訴とされている。
ここ最近、京大病院でこの手の報道が多い気がします
>静脈血を抜き取る管に気泡が混入。安全機能がはたらいて約4分間、人工心肺が停止していたという文面にある
補助的な人工心肺装置とは
PCPS(percutaneous cardiopulmonary support)の事だろう
PCPSの脱血回路が常に陰圧となっているということは周知されていないのだろうか
脱血回路の三方活栓等をわずかに開けただけで大量の空気を引き込む危険性がある訳で...
遠心ポンプに空気が流入すると遠心力を失い、循環は停止してしまう
他にも脱血回路からの採血や補液、CHDF回路の接続、脱血カニューレのエア抜きライン...危険要素は実に多い
今回の事例は“どこから空気が入ったか分からない”と文面にあるが、結論は出たのだろうか
さすがにPCPSに
臨床工学技士が関与していないとい事はないと思うのだが...
- 2011/11/19(土) 19:09:18|
- 医療事故報道
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~京都新聞より~
医療ミスで肝移植患者死亡 京大病院 透析器具を誤装着
京都大医学部付属病院(京都市左京区)は14日、同病院で脳死肝移植を受けた50代の男性患者が死亡した、と発表した。手術後の人工透析で誤ったフィルターを装着した医療ミスとみられるという。同病院は遺族に経過を説明して謝罪するとともに、京都府警に届け出た。府警捜査1課と川端署は、医療過誤による業務上過失致死の疑いもあるとみて捜査を進める。
京大病院によると、患者は肝硬変のため肝胆膵・移植外科で脳死移植手術を希望、5日に手術を受け、術後の経過は良好だった。腎不全を併発していたため、同外科の病棟で継続型の人工透析を受けていたが、12日午後7時半に透析用フィルターが入った筒状の容器(カラム)を交換した後に容体が悪化、血圧が不安定となり翌13日午前10時50分に死亡した。
死亡後の同病院の調査で血しょう分離に用いる別のフィルターが入ったカラムを誤って装着したことが分かった。カラムは同外科の看護師1人が用意し、当直医2人が装着した。二つのカラムは大きさや色が異なるが、同外科が管理する保管所に一緒に置かれていたため看護師が取り違え、医師も気付かず装着したとみられるという。
府警は14日に患者を司法解剖したが、死因は特定できなかった。既に京大病院からカルテと実際に使われたカラムの任意提出を受けており、今後、病理検査などを進めるとともに、医師や看護師から事情を聴いて死亡と医療ミスの因果関係を調べる。
この手の報道は我々臨床工学技士が関与している生命維持管理装置である人工呼吸器や人工心肺装置、補助循環装置、血液浄化装置、あるいはInfusion pump、syringe pump関連....必ず年に数件はありますね
この様な報道があるたびにいろいろ考えさせられます
我々の施設では急性血液浄化及びアフェレシス療法は臨床工学技士がCCUもしくはICUでのみ実施(アフェレシスは血液浄化センター内で実施する場合も多い)しておりますが、大学病院の救急部や集中治療部は若手医師の教育及び医局の方針等で医師による急性血液浄化療法の施行はごく一般的なのでしょうか...
文面によると術後に持続的腎代替療法(Continuous Renal Replacement Therapy )を施行しており、使用していたヘモフィルタを交換(ヘモフィルタだけ交換したのかあるいは回路全体を交換したのかは不明)する際に単純血漿交換(Plazma Exchange)等で使用する血漿分離器とエクセルフロー(AEF)を取り違えて装着してしまったそうです
第3者から見ると、絶対間違う訳ないだろう...という事が現実に起きています
今回も患者さん本人やご家族にとっては本当に残念な結果になってしまいましたが...
たしかに起こってしまった結果は非常に良くない事ですが
この様な医療事故が報道される事自体は決して悪い事だとは思いませんしむしろ我々にとって非常に有難い事だと思っています
というのも報道してもらえるおかげで、我々にとって
新しく気づかせてくれる部分、あるいは考えさせられる部分が必ずあるからです 今回の事例では“看護師と当直医”は関与していたみたいですが
臨床工学技士が関与する体制はとっていなかったのでしょうか?
いずれにせよ起こってしまった事実から我々は何かを学んでいかなければいけませんね
- 2011/11/19(土) 18:45:41|
- 医療事故報道
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