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臨床工学技士blog

臨床工学技士である管理者が、知識の整理も兼ねてですが、主に臨床工学に関する情報をアップしていきたいと思っています。

AMS過作動とFFRW


①AMS Entry Epispde
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②AMS Entry Epispde
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両者ともAMS Entry時に記録された同患者のEGM(上段がA Bipolar 下段がV Bipolar)ですが、さて何か違いはあるでしょうか?

A-BipolarのEGMに注目して下さい。
①のA-EGMをよく見ると、sharpな心房電位の後ろにdullな電位(FFRW)がありますね?
最初の数beatはPVABもしくは心房感度設定によってFFRWをなんとかかわしていますが、AMS detecionの3beat前からこのFFRWのover sensingが認められAMSが過作動しています。FFRWを精査してPVABもしくは心房感度設定を再考する必要があります。FFRWは“電位”や“タイミング”の差はあれ、全ての患者に認めらるものですのでPVABや心房感度調整でしっかりmaskしないといけないですね。

②のEGMはどうでしょうか?
A-EGMをよく見ると、①同様にsharpな心房電位の後ろにdullな電位(FFRW)がありますね。
はたしてそれだけでしょうか...?
よくよく見ると、FFRWの後半成分にsharpな心房電位が混在しているのがお分かり頂けるかと思います。
これはFFRW over sensingによるAMSの過作動ではなくATによるAMSの適正作動だと判断出来ます。

これはSJM社のPacemakerなのですが、植込みdevice業務に携わる我々臨床工学技士はAMS作動のアルゴリズムを知っておく必要がありますので少し詳しく説明します。

AT/AFになればAMSが作動する...なんていうのは誰でも知っている事であって、“どういうアルゴリズムでAMSが作動するのか”を知った上でfollow upを行う必要性があると私は思います(あくはで個人的な意見ですのであしからず...)

同じように閾値を測定して、波高値を測定して...なんていうのはある程度数をこなせば別に誰でも出来る事であって、我々臨床工学技士がfollow-upに関わっている意味合いは例えば上記に記した問題(FFRW over sensingによるAMSの過作動)が生じた場合に、何が起きていて、原因は何で、じゃあ設定をどう変更したら対応できるのか?を考える事にあると私は思います。

同じようにPacemaker トラブル心電図の解析時に正常動作なのか異常動作なのか?正常・異常と判断した根拠は何か?もし異常動作であった場合、何か解決方法はあるのか?...といった事を考える事に我々がこの業務に関わっている存在意義があると思っています。

そう考えた場合に、やはりある程度詳しいアルゴリズムを知っていなければ正常なのか異常なのかさえも判断できません。

SJM社のAMS作動のアルゴリズムですが、FARI(Filtered Atrial Rate Interval)=ファリと呼ばれる心房移動平均Rate intervalをbeat by beatで計算しています。

FARIがATDR(心房頻拍検出Rate)を超えるとAMSが作動するという仕組みです。

要はP-P intervalをbeat by beatで常時監視しており1beat前のFARI(それまでのP-P intervalの移動平均)と現在のP-P intervalを比較して

FARI値>現在のP-P interval⇒新FARI=FARI-39msec
FARI値<現在のP-P interval⇒新FARI=FARI+23msec


という計算をしており、ATDR=170bpmであった場合は新FARI<352msecとなった場合にAMSが作動するという仕組みです。FARIの増減を見てみると-39msecと+23msec...つまりAMSはAT/AFになった場合にある程度早い段階で作動する、AT/AFがterminationしても少しはDDIで作動する、すぐにはDDDに戻らない、おちていくのには時間がかかると言えますね。と同時にAT/AFになってもすぐにAMSは作動する訳ではない、多少様子を見ているとも言えます。でないとPACに過剰反応してころころmodeが切り替わってしまいますしね。

AT/AFがterminationしてDDI→DDDに移行する条件はFARIがMTRもしくはMSRよりも遅く(intervalで言えば長く)なった場合です。

FARIを用いる事でPACに対して過剰に反応することなく、しかもPafに対して速やかに非同期modeへの移行が可能となります。また、波高の低いf波に対し、数発のunder senseが起きても非同期modeを継続するのです。


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  1. 2012/11/18(日) 11:07:35|
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心室センシングエピソード


先日開催された第27回日本不整脈学会のCDRセッションでも“心室センシングエピソードの有用性”に関して報告がありました

心室センシングエピソード(VSE)とは、連続した心室センシングイベントを検出及び保存する機能であり、心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy)において両室Pacingを阻害する要因を特定する事が出来ます(特定に至らない場合もあり得ますが...)

CRTは、両心室をPacingする事で心室収縮の同期性を改善する事が目的です

つまり、心室Pacing率は100%により近い事が望まれ、90%を下回る心室Pacing率は後の心不全入院の予測因子の一つとも言われています

では、実際の臨床でVSEの要因は何が考えられるのか?という事ですがモードがDDDの場合は以下の4つが挙げられます。モードがVVIの時は②及び③が要因となり得ます。

①長すぎるAV-delay設定
②VT検出基準を満たさないRateの遅いSlow VTや非持続性VT
③AT/Af等の上室性不整脈
④Atrial Sensing Failure

Medtronic社製CRT-DのVSE検出基準は心室センシング(VS)が10beat以上、1テレメトリにつき8Episodeまで記録を残す事が可能です

VESではEGMは記録としては残らず、マーカーしか記録されないのですが、マーカーのみでも十分にその原因を特定する事が可能です

最も一般的に考えられる原因は①の設定AV-delayが長すぎるが故に、心室Pacingが入る前に自己QRS波が出現してしまう場合なのですが、実際の臨床でこれが要因となる場合はほとんどないと思います。これが原因だとすれば設定そののもに問題がある事になりますので...

rapid AfやAtrial Sensing failureでも心室センシングエピソードの要因となり得ますしが、一番注意すべきはやはり②のVT検出基準を満たさないRateの遅いSlow VTや非持続性VTを見逃さない事だと思います


  1. 2012/07/10(火) 05:33:53|
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補助循環中の患者管理


補助循環中の患者管理の指標として“混合静脈血酸素飽和度(以下SvO2)”があります

全身の酸素需給バランスが維持されているか否かを知る上で非常に重要な指標です

混合静脈血とはどこの部位を言うのか?
ですが、全身を巡ってきた血液は各々下大静脈、上大静脈、冠静脈を経て右心房に合流します

右心房⇒右心室で混ざり合って肺動脈に達する頃には均一に混ざり合った血液とみなすことが出来るので、肺動脈血のことを混合静脈血と言います

そして本日のメインであるSvO2とは何ぞや?ですが、簡単に言えば

全身の酸素消費量に対して十分な酸素供給量が維持されているか否か”を表しています

SvO2を求める詳細な式は省略しますが、SvO2を決定する因子は以下の4つになります
①動脈血酸素飽和度
②酸素消費量
③ヘモグロビン濃度
心拍出量
SvO2の正常値は75%ですが、認識としては
・70%以上⇒全身の酸素供給量が消費量に見合っている、十分酸素需給バランスが維持されているといえます
・60~70%⇒まずまず酸素需給バランスが維持されている状態
・50~60%⇒全身の酸素需給バランスがすでに上手くいかなくなっている状態であり、何らかの対処が必要
・50%以下⇒LOS、早急に対策が必要な状態...といった感じでしょうか

SvO2が低下する要因は上記4因子の何れかが変化した事を意味しますのでSvO2をモニターすることによってSvO2を決定する因子のどれがどの程度変化したかを推測する事が可能となります

SvO2が低下する要因としては...
①動脈血酸素飽和度が低下した
②酸素消費量が増加した
③ヘモグロビン濃度が減少した
心拍出量が減少した
の4通りが考えられますが、集中治療領域ではやはり心拍出量の変動に依存する事が多いと思います
よってSvO2をモニターしていけば、心拍出量を間接的に知る指標となり得ます

SvO2が上昇→心拍出量上昇を示唆する
SvO2が低下→心拍出量低下を示唆する

ただし、心拍出量はそこそこあるにも関わらず、SvO2が低値を示す場合があります
この様な場合は“発熱”あるいは“貧血”がないか疑いましょう

発熱があれば酸素消費量が増加している為、酸素需給バランスが維持されていない状態といえます
貧血があれば酸素供給量が不足している為、酸素需給バランスが維持されていない状態といえます

PCPS中は右心房から脱血しているが故に、心拍出量はあまり指標となりませんので潅流が適切か否かの指標はSvO2で行うことが望ましいですね

あとSvO2とは関係ないのですが...

PCPS管理中はWet Lung対策で定期的に酸素フラッシュを施行されている施設も多いかと思いますがうっかり酸素流量を元に戻し忘れた経験はありませんか?

後々気付いて、元に戻せばいいか~という訳にはいきませんので気を付けましょう

酸素流量を元に戻す(おおよそ1~3L/min程度)事を忘れてはいけません

と言いますのも、PaCO2が吐け過ぎてしまうと、脳血流が減ってしまいます

脳血流はPaCO2のレベルに依存しますので、PaCO2を下げ過ぎてしまうと脳障害を引き起こす可能性があります

これは重要な問題です、看護師さんも何気なく酸素流量を上げるのは構いませんが、流量を元に戻し忘れる事の危険性を十分認識して操作して頂きたいと思っています
  1. 2012/02/22(水) 22:32:54|
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PEEPによる虚脱肺胞の改善


http://www.youtube.com/watch?v=oKH7CtsEgHw

ニワトリの肺のPEEP Recruitmentの動画です

含気がない状態からPEEPを徐々に上げていくと無気肺が改善されていく様子が示されています

赤黒い部分が無気肺で、PEEPを徐々に上げていくと赤黒い部分が減っていく様子がお分かり頂けるかと思います

この動画の換気様式は...恐らくPressure Control Ventilationでしょうね

Open Lungにした状態からPEEPを0にして虚脱させると、直後の吸気時には無気肺は認められませんが、次の吸気時にはすでに無気肺が出来ていますね

重要なのはVolumeではなくPressureなのです、この動画からPEEPの重要性が分かって頂けると思います

但し、実際の臨床では無気肺を改善する為に施す手技はRecruitmentであり

無気肺を改善させた状態を維持する為に付加するものがPEEPだと言えます
  1. 2012/01/10(火) 19:40:34|
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旧臨床工学技士掲示板


皆さん御存知の旧臨床工学技士掲示板(現MedicalWorkers)ですが、一番古い(決して情報が古いという意味ではありませんので悪しからず)トピックスはなんと1998年3月までさかのぼります

http://medical.yama-net.jp/

以前は非常に活発な討論がなされていたことを思うと、最近は何か寂しさを感じますが...

私自身も働き始めて1,2年はこの掲示板を頻繁に拝見していましたし、1998年3月以降のすべての過去ログに一通り目を通しました

特に“人工呼吸療法や補助循環”に関しては一時期非常に活発な討論がなされておりまして、すべて印刷して理解出来るまで何度も繰り返し読み直していたのを覚えております(印刷した用紙はファイルに綴って今でも持っています)

私が言いたいのは“過ぎ去った過去の情報は決して古い情報ではなく、今でも十分通用する情報もある”という事です

特に人工呼吸療法に関しては臨床ですぐに役立つ情報が盛り沢山であり、一読の価値はあります

人工呼吸療法、最近はまた変遷を迎えておりますが、書かれている内容に関しては今でも十分通用する内容だと思います

ただ、最近はあまり活発な討論はなく、どちらかと言えばCE-Networkの掲示板に情報が流れている印象がありますね

http://ce-net.umin.jp/index2.html

いずれにせよ“時代遅れにならなぬよう、いろいろ情報収集する事は重要ですので、その“一手段”として今後もネットは有効活用させて頂きたいと思っております
  1. 2012/01/01(日) 10:31:47|
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